2011年3月、事業を立て直すために、新たな経営戦略を策定する。
このとき、当社には3つの事業があった。不動産投資ポータルサイトの「不動産投資の楽待」、住宅のポータルサイトの「住宅の楽待」、そして賃貸のポータルサイト「賃貸の楽待」である。「不動産投資の楽待」は比較的順調で、事業単体で見れば黒字だった。しかし、「住宅の楽待」「賃貸の楽待」はリリース当初から赤字続き。この2事業の赤字が膨らみ、会社全体として大赤字の状態だった。さらには、ベンチャーキャピタルから出資してもらった資金も残り半分となり、いよいよ追い詰められる。
なんとかしなければならないー。そこで坂口が打ち出したのが「ハンニバル戦略」だった。
戦略名は坂口が名付けたものだ。名前の由来は、古代都市カルタゴの将軍・ハンニバル。紀元前219年から行われた第二次ポエニ戦争で、ハンニバルはローマに勝利するために奇襲作戦を打ち出し、攻略不可能とされたアルプス越えを実現した。我々もハンニバルのように、強者に勝つための戦略を実行しようというところから「ハンニバル戦略」と名付けた。
戦略の内容は、ポータルサイト業界で4番手以下である我々が、業界トップのサイトに勝つため、「弱者戦略」を徹底しようというものだった。弱者戦略は「ランチェスター戦略」という、中小企業が大企業という強者に勝つための戦略論を参考にして、どういった作戦で進めるのかを考えた。ハンニバル戦略を実行しても勝利の兆しが見えなければ、事業を撤退すると決めた。
そしてこの戦略と作戦概要を全社員の前で説明したのだが、社員はこの戦略に全く関心を示さなかった。この反応を見た坂口は「誰も会社や事業の成長について考えていない」とショックを受ける。しかし、なにもしなければ事業は継続できなくなり、会社は衰退してしまうだろう。戦略に対して反対意見を出す社員も多かったが、作戦を強行することにした。
ちなみに、この戦略を実行したのち、「住宅の楽待」と「賃貸の楽待」は事業撤退を決定。「不動産投資の楽待」事業一本に絞ることとなった。